ポースケ

ポースケ

佳枝自身の話で言うと、災害に逢ってないし爆弾を落とされているわけでもないけれども、近くにいる人間の精神的な餌食にされる。佳枝は、スマートフォンタブレット端末をみんなが使っていることを、すごく未来ぽいと感じながら、だったらいつ人は、誰かを補食しなくても生きていけるところまで完成するのだろうともどかしく思い、それが高じて混乱する。

頭が邪魔だと思う。人間はどうして、今起こっていないことに苦しんだりするんだろうか。

えらい人は先々のことを見据えてどうのこうの考えられて、八喜三憂とかに調整できるのかもしれないけれども、我々しもじもの者は、一つ一つ通過して、傷付いて、片付けていくしかないのだ。そうする以外できないのだ。


『ポトスライムの舟』の数年後の話で、ナガセの友人ヨシカの経営するカフェが舞台。幼稚園に通ってた恵奈ちゃんが小学五年生になっています。
ポトスライム〜は図書館単行本ののち、文庫落ちしてから購入したぐらいに好きな作品なんで、思い入れあるし、あとは津村作品はいつもそうだけど、自分の現在の境遇と重ね合わせすぎて、懐かしんで切なくなったり、適度なユーモアに声だして笑ったりとか、たった一文で滝の涙流したりとか、いろいろ忙しく読みました。終わってほしくないこの世界。出来ましたら、また是非続編を!

ヨシカは店主で、恵奈は小学生だけど、前作主人公のナガセ(今回影薄めです)はじめ、ピアノ教室の先生・冬美さん、ひどい肌荒れに悩む営業事務ののぞみ、元彼の干渉に心を乱される土質試験の会社で働くゆきえ、ヨシカの店のぱーとタイマーのとき子さん、竹井さんなど、様々な環境で働く女性がたくさん登場して、ただ働いて、ただ平穏に生きていくことが、どれほど大変か、どれほど女達には敵となる、害となるものが世の中にあふれているのかを教えてくれています。人によって、「私よりはマシじゃん」と羨むか、「あー私、この会社よりかは恵まれてるわー」と胸を撫で下ろすかはまちまちだろうし、そこから、前を向くか、ショックを引きずるかもまちまちだろうけど、いつも津村さんは、祈りながら書いてくれているんだと思う、働く人たちがみんな(きっと性別関係なく)、変に心を破壊されることなく生きていける世の中であることを。
…じゃあ私が何を思い、どう進もうとしているのかは、まだ問題が大きくて“準備中”て感じなのですが、ちょっとゆきえの処世術てゆうか、自分の律し方は参考にしたいと思った。ゆきえ本人に“律する”みたいな毅然とした構えはなかったかもしれないけど。ふさぎこんだり、ズーンと落ち込んで固まっているよりも、叫んだり奇声あげてみたり腕を振り回してみたり、怒りの方へエネルギーを移していった方が、悩み事ははやく吹き飛んでゆくのかもしれないな、と。吹き飛んだりはしないほどに根が深くても、どうでもいいやの部類に放っておける。こうゆうのは性格出るので、なかなか、うじうじ型の私には難しいと思うけども、でもゆきえさんの態度は、見てて(読んでて)気持ち良かったので。ぼんちゃんと仲良くね、ゆきえ!

そういえば、母でも妻でもなく、その属性にいまだ全く縁のない私でも、就活地獄でふさぎこむ娘を案じるとき子さんの心中を慮ったときが、いちばん泣いたな。年齢的なものか。こわいな年とるって。そうゆうシフトがスムーズに行われてしまうのか…こわいな…