和子の部屋 小説家のための人生相談

和子の部屋 小説家のための人生相談

図書館で“川上未映子”で検索したら引っ掛かってきたんだけど(もう私ほんと川上さん好き。大好き!)、なんとまあ大当たり本だったんですから。
和子こと阿部和重による、作家のための人生相談の対談集。お目当ての川上さんはもとより(これって結婚前なんだよね?これを機会に付き合い始めたの?など余計な好奇心も沸いてしまいましたが…)、特にりっちゃん、江國さんと桐野女史の文学論掛け合いがすんごく深かった…私は勿論書く側ではないけど、苦悩とか工夫とか意図とか、いろいろあるのだなあと気付けたことで、読み方もちょっと、いやけっこう、変わりました。
これからも読書、楽しめそうです。肝心の阿部和重氏は10年くらい前に一回読んだっきりなので、これを機にむさぼってみようかなあ。


だから荒野

だから荒野

で、桐野さん。
↑の対談読むずーっと前に読んでたんだけど、対談の感じからして、なんかこう、そうゆうことだったんか…と腑に落ちたというか。
ええとね、毒性と暴力性に満ちた桐野作品が好きな私にはまたしても消化不良な内容で、貸してくれた母とも「また誰も死ななかったね」「新聞連載だからしょうがないんじゃない?」などとため息をつきあってたわけですが(期待の内容!)、どうやら桐野さんは加齢と共に、いろんなことに瞬間的に“ビビッ”とこなくなってきたそうで、その影響が多分に出ているのやもしれん、と。どうやら、桐野さんが書きたいと思うテーマと、私たちブラック派読者が書いてほしいと思うテーマ(最近では、あの尼崎の監禁事件とか…)は全然噛み合わなくなってきているみたい。今まで書きすぎてきたテーマに、飽きてきているのかなあ。人間、作家だけじゃなく、心変わりは当然のことだけど、寂しいんです。もしや問題はテーマの選び方ではなくて、情熱の温度なのかもしれないけど(それについても桐野さん本人が悩み相談しておった)あの、読んでるこっちもグワーッと引っ張りこまれる、抗いがたい真っ黒で真っ赤なエネルギーにふたたび出会えることはできるんでしょうか。


キャベツ炒めに捧ぐ

キャベツ炒めに捧ぐ

“ここ家”という総菜屋さんが舞台。おとなの、というより“アラ還”おばさまたちの一年を描いているのですが、多分私、ほとんど全作読んでるけども、いちばん好きですわー。時々「合わないなあ…」と思う荒野さんの冷たさが押さえられてて、ほっこりあったかくてユーモアも適度、っていう文体が、まずとても好ましかった。前述の和子さんのおかげで、読み方にも良い変化が見られ、こういう風にすんなり好感を持てるようになった…と分析してみるんだが、いや本当に真剣に読むと(え、今まで真剣じゃなかったって?そんなわけが…)、荒野さん、巧みだわ。すんごく巧いんだわ!!
食べ物は、美味しい食べ物は、人生を豊かにする。そういう、素敵な物語でした。スナック菓子やら、も、勿論私には美味しい食べ物だけれども、豊かさってものを重視して口に入れる物を選ばねばならないなあ、と反省してみたりも。
やーしかし、ここ家が近くにある町に住みたいです。出てくる全部が美味しそう!新じゃがと粗びきソーセージのにんにく炒め、あさりフライ、カレー風味のロールキャベツ、鮭の南蛮漬け…私だったら何頼むかなあと悩んじゃうよー。