沈黙の町で

沈黙の町で

中学生のいじめがテーマ。善悪の区別が未熟だからこそ、罪悪感からのブレーキが機能しない中学生。本気で恐いと思った。もっと年上の高校生あたりの行為に見られる、下卑た感じとか残虐性とかはなくて、あくまで日常の一片、遊びの延長のような、なんというか明確な意志がないようないじめが、少年を死に至らしめてしまう。これはもう、教育云々とかでは防ぎようはないよな、と思ってしまう。逃げるわけではないけど、もう読み返したくないない。小説読んで考えるの放棄して暗い気持ちのまま終わるの、久しぶりです。
誤解があるのかもだけど、いじめられる側にも原因はあるのでは、ていう人物設定になっていて、まあ確かに変な子ではあるんだよね。まあでも、個性っちゃ個性なので…って流せないのが、学校生活。なぜなら、小説内にも書かれていたんだけど、中学生には基本的に家と学校しかないから。狭い世界で、異質なものは悪目立ちする。分母が絶対的に少ないのだから当たり前。いじめる側も、いじめられる側も、実に息が詰まりそうなほどに狭い世界。生きづらさを克服するためのヒント、平野啓一郎の提唱する“分人論”を広めていきたい私なんだけど、こんな風に極端に分人が少ない環境の場合では、一体どうしたらいいんだろうな…