東京ダンジョン

東京ダンジョン

題名からあの大作「TOKYOBLACKOUT」のような大規模なテロ小説を想像してわくわくしてたんだけど、…ちょっと違いました。後半は1ページ1ページ立ち止まって考えさせられました。就活中の学生たちが、今この瞬間の自分たちにしか感じられない危機感を、地下鉄封鎖という強行手段を用いて世間に訴えていくんですが、あの頃の、約10年前の私が経験した時代から問題点はほとんど変わってないことを知って、まずそこで相当暗い気持ちに。ただの“エンターテイメント”で終わってくれない福田和代っていうのは、個人的にはショックだったけど、真摯でとてもいい小説だった。
首謀者の朝宮が自首直前に叫んだ、演説用ではない生の思いが、心に響いて泣きそうになった。憂うだけなら誰にでも簡単に出来るのに、社会や自己に対して希望を持つことは、どうしてかとても、難しい。朝宮のような端整で清々しく毅然としたリーダー、幻想だとは思いたくないなあ…