これからお祈りにいきます

これからお祈りにいきます

サイガサマというのは、主人公シゲルの住む雑賀(市?町?)で信仰されている神様のこと。サイガサマは人間の体の一部を取っていき、その力で人々の願いを叶えるのだけど、人々は捧げる部位は選べない代わりに、「ここだけは奪われたくない」という部位を申告することはできるんです。その部位を粘土や折り紙や金属なんかで作成して、人形に編んだ籠の中に投げ入れて燃やす、という祭事が冬至の日に行われるんだけど、サイガサマなんか信じてないし、冬至の祭もただ出店だけが楽しみ、という体の高校生のシゲルが、公民館でバイトをしているためになんやかんやで祭りの主要な部分に関わっていくことになる、そんなおはなし。
私は、大都会に生まれて育ったから、こういうお祭りとかがごくふつうに根付いている地域の話って、本当に興味深い。信じている/いないは別にして、神様ときいて思い浮かべることのできる存在が明確であるということ、私は経験してこなかった世界なので。
しかし、周囲の大人との付き合いかたに、既に工夫をこらしている、老成した雰囲気のあるシゲルが、元同級生が気になりだして、メールの返事のスピードに一喜一憂する様が、もうあまりにリアルで微笑ましかった。年相応の部分とのギャップがいいよねえ。最後の、サイガサマへの「へたくそ」という悪態も、思わずにんまり。ちょっと抜けててちょうどいい感じ、津村さんは本当に上手に描くよなあ。
高校生の男の子主役、ってのも、たまにはいいね。
二作目(こっちは大学生の男の子が主役)も、とっても好きだった。京都で観光ボランティアしてるの。いいなー私だってやりたい、それ。でも“ボランティア”じゃあ生計立てられないからさあ…観光タクシーの運転手になればいいのかなあ………、て現実直視しすぎだよ私!