暗転

暗転


列車の脱線事故。その時被害者は、加害者となった鉄道会社の社員は、真実に迫る警察は、記者は、何を考え何に悩み何をなすべきか。
題材は良いし、硬派な堂場作品嬉しかったんですけど、なんか全体的におとなしくて物足りなかった…。事故原因の真相が結構引っ張ったわりに弱くて。でも、括りはミステリーではないから、スポットがそこ(=事故原因)に当たるのはまずいよなあ、と思い直してもいる。あくまで、それぞれの立場の人達の悩み抜く姿が大事なわけだから。
概ね、満足です。はやく汐灘サーガの続きを読みたい!


何者

何者

「だって、短く簡潔に自分を表現しなくちゃいけなくなったんだったら、そこに選ばれなかった言葉のほうが、圧倒的に多いわけだろ。だから、選ばれなかった言葉のほうがきっと、よっぽどその人のことを表してるんだと思う」

すごいぞ、朝井リョウ。現代というものを真摯に見つめてる。出るべくして出てきた作家さんなんじゃないか。
そう、此処や彼処は、ほんとうにたいせつなことを語るべき場所ではないんだ、きっと。私はそれを分かっているつもりで、でも分かってたことを隠していた、ような気がする。それを、暴かれたようで、一瞬息が止まってしまった。
ほんとうに私が見せたい顔、ほんとうに伝えたい言葉って、なんなんだろう。じゃあ逆に、隠したい顔、言葉に出したくない感情って、なんなんだろう。指先で紡ぐ言葉に、“ほんとう”はなくても、“うそ”もないはずなのにな。
こうゆうときに私には平野の“分人論”があるので無敵かと思われたけども、どれもこれも“ほんとうの自分”だもーんふふーん、てなっても、その“自分”を登場させる場面を選ぶ方法はねえ、果てしなく難しいんだわ、やっぱり。取捨選択。まだまだ課題が多いなあ、我が人生。