空白を満たしなさい

空白を満たしなさい

生きていくための、小説。
私にとって、小説は生きていく理由のひとつだった。軽い表現で、“娯楽” と言っても間違いじゃないけれど、なかったら生きていけない、というのだって過剰表現ではないのです。
まず私がいて、小説があった。けれど、この認識が180度変わった。この小説があって、これからの私が、在るのだろう、と。
そんな風に、生き方を諭された小説なんていままで出会ったことがなかった。
“生きたがっている”私。そうか、そうだったんだ。タイトルの実際の意味とは違うけれど、私が、私の中の“空白”として見てみぬふりをしていた時間が、あたたかいもので満たされた気がした。
平野、過去ごと私を救ってくれて、ありがとう。もっと、救われるひとがいるはずだし、まだ間に合うひともぜったいいる。
どうしたらいいのか、どう生きていけばいいのか、本気で悩んでいるひと、読んでください。どうせ小説なんて、と、もう気力もすべて失っていても、それでも、平野の提示した“分人”にすがって欲しい。

物語として、あのラストとか、数年後の遺された家族のこととか考えたら、完全な救いの話ではないし、もうあとは真剣に自分自身と、周囲の大事なひとに向き合って最良の答えを見つけていくしかないんだよな。一生ものの課題を与えられた気持ちでいるし、一生を生き抜いていける勇気ももらえた。
嬉しいし、清々しいし、高揚するし、でもなんか、責任みたいなものも。重い。そんな、読後感。2012年、これで有終完美だ。全力で、ありがとうっ!!(きらきら)