不愉快な本の続編

不愉快な本の続編

絲山さんの作品ってそんなにいっぱい読んだことないんだけど、どれもこれもなんか泣き顔してるんだよな、本自体が。もろに哀しい話でもないのに、どうも眉間の皺を誘われる。なんだろなあ。
地元・呉でとんでもないことをしでかして、「よそ者」であることを受け入れながら東京、新潟、富山と移り住む主人公は、自ら「自虐のサイクル」を持っていると言いはなつ、いわゆる“だめ男” 。飄々としてて厭世的で感情の温度が低くて、でもぜんっぜん悪い男になりきれないこの主人公を憎めようか!
私は“ボク”っつうカタカナ一人称が苦手なんですが、あまりにこの主人公に似合いすぎていて、違和感というやつが似合いすぎていて、逆にすんなりいった。途中までカタカナ表記に気がつかなかったみたい。あとから絲山さんが意図的に使用してたってことを知って、あーやっぱりなーって深く納得。こうゆうのも含めて、すっごくすっごく言葉を選んでいるのが伝わる!そんじょそこらのセンスじゃねえなあ…と、読んでてわくわくする。“隣接”の解釈とか。街並みの書き方とか。もっと読みたくなったな、絲山さん。あー、ちょっと、久々読書が充実してよかった。