バイバイ、ブラックバード

バイバイ、ブラックバード


実は、ともったいぶるほどでもないけど、今まで苦手でした伊坂さん。挫折した作品、けっこうある。昨年の「モダンタイムス」を初めて心から面白いと思えて(すーっと小説世界に浸らせてくれない、癖のある文体にひっかかりっぱなしだったの、ほら、重力ピエロとか。読み終わるのにすんごく時間かかったんだな…)、久しぶりに緊張しつつ挑戦してみたんですけど、いやもう、笑えるし泣けるし、これはほんと傑作!本気でぶははって笑っちゃったし、鼻の奥ツーンてなるぐらい涙腺刺激されたし、素敵だったー。相変わらずの個性たっぷりの文章だったけど、変なコリ?トゲ?みたいのがなかった気がする。
マツコデラックスを彷彿させる、言動がとにかく破壊的な巨大な女・“繭美”が自分も、そして星野ちゃんも知らないうちにすこしずーつ“人間らしさ”を身につけてゆく過程に注目して読むと、心があったかくなるよ。星野ちゃん、あ、主人公のアラサー男子、5股もかけてるけしからん野郎なんだけども、それがぜんっぜん不潔に感じないっていう不可思議さったら。どの女性のことも真っ直ぐ均等に大事に思ってて、まあ現実にそんなことがあるわきゃないんだけど、そうゆうのって羨ましいなあって思ったり。あ、5股できることが羨ましいんじゃなく、瞬間瞬間で一生懸命、損得勘定は優先的には働かず、欲望に忠実、浮気さえ清々しい印象を与えられる星野ちゃんの人柄が、ですよ。自分の辞書には“上品”も“努力”も“気遣い”も“人助け”も載ってない(実際サインペンで塗り潰している!)破天荒で規格外の繭美までも、ついに星野ちゃんのファンになっちゃうというラストが、もーう素敵で素敵で。幕引きも絶妙でした、伊坂先生。
そーなると、多作ですし、いろいろ読みたくなるよね!夜はすずしくなってきたし、今秋は伊坂さんいっぱい読むでよー♪伊坂フリークの皆さま、おすすめを教えて下さいませ!