とうへんぼくで、ばかったれ

とうへんぼくで、ばかったれ

札幌の職場でひとめぼれしたエノマタさんを追って東京まで追いかける吉田、という23歳の女の子が主人公。
このパワーはなんだ?分かるようで分かりたくない、単純な恋とも違う、収まりつかなくなった衝動に見える。結局、“ストーカー行為”を隠しとおして偶然を装い、交際までこぎつけてしまう若いオナゴのパワー、圧倒されちゃう。
でも、念願かなっても吉田が全然幸せにならなくて。それは、“とうへんぼく”なエノマタさんの性格も原因なのだろうけど、なんというか、ふたりの間に隠し事がある(=出会いは偶然ではなかった)っていう状態が、とんでもなくまずいんだろうな、と。そんなんで、うまくいくわけがないんだろうよ、と、そんなのは結末を知る前から予想はついてました。でもま、吉田も気がすんだろう。うん。最後の章の、エノマタさんの独白の方が、40過ぎのおっさんの独白の方が、しみじみ共感できて怖いわ、私。そんなんだから結婚できないんだぞエノマタ!と思いながら、つうか私もだな、と反省するのであった。
しかし朝倉さんは、明言しにくいもやもやした女心を、なんとかうまいこと言葉にしようと一生懸命な作家さんだなあ。痒いところに手が届くというか、でも実際届いてみたら余計痒くなってくるっていう感じもあるんだけど、この独特の言語センスは他にはないよ。好きだなあ。